東京ドームから脱出してきた

 久しぶり……でもない(?)、リアル脱出の話。

 今度は東京ドームから脱出してきた。もともとは4月に開催される公演に参加する予定だったが、震災の影響で4月分は全部中止となり、そのためにGWに振替公演が開催されたので、そちらに参加。共に参加してくれた仲間たちは朝早い集合にもOKしてくれて感謝。

東京ドームからの脱出とは

 リアル脱出ゲーム OFFICIAL WEB SITE を参照願いたい。

最初が一番難しかった

 最初ってなんのことかといいますと、「現地への到着」。乗る予定だった電車が本数縮小のために悉くなかったため、遅れに遅れて、開始5分前に到着しました。ギリギリすぎる。しかも何人か分のチケットを持っているので皆を待たせることに。いつもより余裕のないスタートとなってしまったが、実のところ、脱出自体はこれに比べれば難しくなかったと思う。

メンバー構成

 最近の規模の大きいリアル脱出は、チームわけなどが存在しないため、一緒に参加した仲間たちと協力することが一般的になりつつある。遊園地からの脱出では14人で挑んだ我々は、今回も大人数で挑んだ。といっても、人数にして7人。特に謎解きスキルの高いメンバーが何人か別チームでの参戦となったため、戦力的には遊園地の時と比べると若干厳しいのではないかと推測していた。初参加の人もいたし。

最初の一手が肝要

 今回も手元に地図や謎の回答を書くためと思われる答案用紙のようなレイアウトのページで構成された紙を渡された。開始宣言まで数分。紙に書かれている情報を全て頭にインプットする。開始までの時間はリアル脱出シリーズではお決まりのBGMが流れている。が、今回はドーム側の都合か、定期的に森永のCMが前面のスクリーンに表示された。雰囲気を作るBGMがその度に途切れ、明るくバカっぽい(失礼)ノリのCMが流れる。はっきり言ってシュールだった。が、これも謎を解く鍵かもしれないのでCMの内容を頭に入れておく。

 時間になるとグラウンドに一人の男が現れる。注意事項、説明、その他諸々話した後、開始を宣言する。制限時間は60分。

 僕は開始前に地図を見ながら、数字が振られたいくつかの場所に謎があるのではないかと推測し、開始を宣言される前に誰がどの場所を見に行くかの分担をある程度決めておいた。開始直後に全員に指示し、自らも自分の担当する場所を見に行くことに。

 道中、いくつかの謎をゲットする。数字しかかかれていないもの、平方の升目が半分だけひらがなで埋まっているもの。そして、観客席から見えるスクリーンに表示されたヒント。また、観客席の奥の壁上部に6つのユニフォームが置かれているのも目にした。僕は野球に詳しくないが、最初に聞いた説明によると読売ジャイアンツ永久欠番のユニフォームらしい。どう考えてもこれは謎を解く鍵だろうと思いつつ、とりあえず使いどころがないので保留。

 結局、地図上のポイントには何もなかった。一通り担当箇所を見て、最初の位置に戻る。他のポイントを見に行った仲間も、それぞれ謎を持ち寄りつつも、目的地では何も得られなかった様子。場所によっては、そこにいくための階段が封鎖されており、近づくこともできなかったとのこと。

 数字が振られた場所に謎があるという推測は外れていたが、それを探す仮定で一通り必要と思われる情報は得た。まずはこれらの謎を解く。謎ははっきりいって簡単だった。まあ最初から全力全開で謎を用意されたら9割以上の人が何もできないという酷いゲームになるだろうことは想像に難くないので、ちょうど良い難易度といえる。

×をもらいに

 もらった紙の上部に問題番号と連動すると思われる枠があった。何かに使うことは間違いないが、最初の時点では放置していた枠だが、使用できない階段にいったメンバーから、「×が4つ以上あれば階段を使えるそうだ」と聞いたことから、解答所に答えをもっていけば×がもらえるのではないか、と推測。この時点で解ける謎を全て解いて、皆で解答所に赴く。そこはまだがらがらだった。僕らはそこで解けた謎の分、――4つの×をゲットした。でも、なんで○じゃなくて×なんだろう。

階段をのぼって4階へ

 封鎖されていた階段からは3階と4階へいけるようになっていたが、実際には3階の扉は閉じられており、そのまま4階にのぼることに。4階には1つの謎を解くための11のヒントがあることがわかっていた。まずはそのヒントを回収。4階全部を回るのは効率が良くないので、2チームにわけて、両端からヒントを回収し真ん中で合流することに。得られたヒントは、「ちょこもなかのつづきは」。そんなの決まっている。答えは「ジャンボ」だ。チョコモナカジャンボ――開始前に散々スクリーンに流れていたCM、やはりヒントだった。

そしてグラウンドへ

 5つ目の×をゲットした僕らは、×が5つあれば入れるグラウンドへと踏み込んだ。スクリーンに提示されたヒントに従い、3つの鍵を手に入れる。「右下から時計回りに読め」「穴を読め」そして、謎の図。僕らはここで行き詰った。

 正直なところ、ここでゲームオーバーか、と思った。おそらく僕らだけでなく、ほとんどの参加者にとって、ここが脱出できるかどうかの分水嶺だろう。リアル脱出では最後、あるいは最後の手前あたりにこの手の最も難しい問題を配置しているようだ。遊園地からの脱出では、偶然にも僕の頭の中に答えがあったが、今回は自力で解ける気配もない。

 が、やはり謎解きが得意な人間というのはいるもので、仲間の一人がドームの天井と謎の図の関連性に気づいた。そして、手元にあった同じ形の図と照らし合わせて、「右下から時計回りに」「天井の穴の開いた場所」に該当する文字を読む。「すたーはゆうしゃだ」。

最後の謎

 スター――ここで言うスターとは、もちろん永久欠番の6人に違いない。そして、僕らの手元の紙には5つの×が書かれていた。それぞれの×の両隣には意味ありげな★マーク(形としては、★×★×★×★×★×★となっていた)。

 使いどころのなかった永久欠番の数字を★にあてて、なぜか○じゃなくて×がつけられた意味を考えると――、答えはひとつ。6つの永久欠番で乗算する。

 一人がスマートフォンで計算を行う。僕はその場で筆算する。計算結果が出たのは同時。どちらも同じ数字だった。

 さて、この数字をどう使うか。これは簡単だった。遊園地からの脱出でも使われた手法。最初に何も得られなかった地図上の数字が振られた場所。先の結果の数字の順に、地図上に線をひくと――、地図上に矢印が現れる。矢印が示すのは、閉じられていた階段の3階。

脱出後の楽しみ

 僕らは3階の閉じられた扉の前のスタッフに手元の紙を見せた。地図上に矢印が描かれている。スタッフは矢印を見て、扉を開いた。今回も、無事脱出できたようだ。

 僕らは脱出者が待つ場所へと案内された。そこには見知った顔もあった。そこでゲームの終了を待ち、別の場所へと案内された。

 僕らが案内された場所、それはVIPルーム。僕らはここから、下の観客席にいる脱出できなかった人たちを見下ろす。彼らに気づかれないように。彼らの前では開始を宣言した男によって、謎の解説が行われていた。今までと違い、スクリーンを使ったグラフィカルな解説。解説が進化していたとは。

 謎の解説はこのイベントでは恒例のことである。基本的に、参加者には回答が提示される。わからないまま帰されることはない。そして、全ての解説を終え、いつもの台詞。「今回脱出したのはこの方々です!」

 観客席の皆が振り向く。その先にいるのはVIP席に座る脱出成功者たちだった。僕らが参加した回の公演は、脱出率2.9%程度だったらしい。僕らは今回も無事に、最後に紹介される側になれた。そして少しの間、優越感に浸った。