急には変われない

 空いた時間にふらっと本屋に寄ると、大抵は今流行りの本が並んでいるコーナーに目をやります。これはもうずっと前から習慣化されている行動なのですが、最近は本当にマニュアル本の類が増えているように思います。もちろん10年前にもありましたが、今ほど前面に押し出されてはいなかったのではないでしょうか。

 この手の本を購入される方は、一定以上の向上心を持っていらっしゃるのでしょう。これらの本には、購入者が実践することで成功や評価が得られる何らかの手法あるいは精神論が記されています。以前、本の内容が購入者に適用できるとは限らないということを書きましたが、実際には実践すればおそらく身につけられるだろうけど、購入者が自らそれを諦めてしまっているパターンが少なくないように思います。

 ある手法を無意識に行えるようになるには、それを自らの習慣にする必要があります。これは一朝一夕にはできないことです。そして、これらの手法は実践したからといって1週間や1ヶ月で必ずしも成果が出るとは限りません。つまり自らの生活に馴染ませるのも、成果を出すのも、時間がかかるのです。

 この分野の似たような本を買い続けている人は、もしかしたら成果が出るのを待っていられない慌しい人なのかもしれません。たとえば成功者は皆早起きの習慣がある、という本を読んで、「明日から朝早起きしよう」と意気込んだところで、すぐにそれを習慣化することはできないのです。次の日は早起きできるかもしれません。その次の日も大丈夫かも知れません。しかしその次の日は寝坊するかも知れません。ここで寝坊した人はこう考えるでしょう。「三日坊主になってしまった。自分はなんて意志が弱いんだ」と。そして次には意志を強くする手法を求めて本を探すのです。

 この手の失敗が起きる理由は、高すぎる目標設定にあるのではないでしょうか。最初から毎日早起きできるようになることを考えるのではなく、たとえば週に2日は寝坊しても良い、という状態からはじめて、慣れてきたら毎日早起きするように目標をあげた方が習慣化できる可能性は高いでしょう。

 向上心を持つのは良いことだと思います。勢いを持って実践するのも良いことだと思います。あとは、一度や二度の失敗で自分を見捨てたりしなければ、大抵の手法はものにできるのではないでしょうか。