夜の遊園地から脱出してきた

最初に

 このブログでは、基本的に技術的なコンテンツしか書かないようにしているのですが、以前も一度、このネタで書いたこともあり、今回はここに書くことにする。

「夜の遊園地からの脱出」について

http://realdgame.jp/v/event/index.php/002_10

 詳細は上記ページを参考にしてもらうとして。僕は仲間たちと総勢14人で参加してきた。参加したのは19日の公演。今回は、その記録を記す。既にかなり曖昧になっているので詳細な部分で間違いがあるかもしれない。指摘いただければ修正するので、見つけた方は指摘くれると助かります。

久しぶりの遊園地

 よみうりランドに行ってきた。もう長いこと遊園地など行ってなかったれど、久しぶりの遊園地。目的は「夜の遊園地からの脱出」。

 閉園後の遊園地で開催されるイベントだが、このイベントのチケットを使えばタダで入場できるということもあり、昼から現地に入り浸った。13時頃に入園してから、遊園地で遊びつつ、時折後から来る仲間を回収しつつ、閉園までまったり遊んだ。主にむきりょくかん。の吉村氏が絶叫マシンにおびえる様を生暖かく見つめつつ、他愛もない話で盛り上がったり、ゲームに興じたりした。

 17時の閉園にあわせ、一旦遊園地から出て、1時間後のイベントの開場を待つ。18時にゲートに行った時には、かなりの行列ができていた。今までのリアル脱出とは規模が違う会場に、規模の違う参加者による行列。この瞬間、遊園地で遊んでいた楽しさな一瞬で吹き飛び、本来の目的である脱出への楽しみに集中していた。

開場前から戦いは始まっている

 僕らは行列を前に作戦を立てた。過去のリアル脱出の傾向から、今回は個人戦の可能性が高いと思っていた。個人戦の場合、他のプレイヤーとの協力は自由だ。むしろ会場の広さを考慮すれば、一人で挑むには時間が短すぎるといえた。僕らは個人戦の場合どう動くかを話し合った。仲間は総勢14人。全員で一緒になって行動するのは効率がよくない。最初はあちこち歩き回ることになるだろうことは予想に堅くなかった。最低でも2チーム以上に分けることを想定しておくよう全員に伝え、入場待ちの行列に並んだ。

 開場から開始まで1時間。その間、続々と人が入っていった。参加者は1000人程度らしい。これまでにない規模だ。そして脱出の成功率は10%未満とのこと。緊張感が増す。この時間も、またとない楽しみだ。

非情な謎解きの開始

 19時。ステージにマイクを持った男が現れる。必要な情報が与えられ、スタートの宣言。制限時間は90分。

 開始前にもあれこれ推測していたが、開始と同時に開いたヒントを前にすべてが吹き飛ぶ。8つのヒント。謎の方眼。謎の記号。

 2チームどころじゃ全然足りない。急いでチームを8つに分けて、それぞれのヒントが指す場所へ向かう。

 回収できたのは半分程度。残りは成果なし。とりあえず集まったヒントを使う。どうやら方眼にはめ込めるようだった。謎の方眼は穴あきの文章と、数字とアルファベットの並びの2つに変わった。何人かは回収し損ねたヒントを取りに行き、残りのメンバーは先ほどできたヒントの解読を試みた。

 四行の文字列のうち、後半の二行は、「くろのつなぎにぴーすしろ」。仲間に聞いてみると、どうやら黒のツナギを着たスタッフがいた様子。何人かに黒のツナギを着たスタッフへのコンタクトを依頼する。

 まだ穴のあいたままの文章の前半は、後半との対比から、「あかのつなぎにべろをだせ」と推測できた。こちらも、赤のツナギを着たスタッフの場所を覚えている人に確認を頼む。

 まだ埋まっていない箇所は開始40分後にオープンシアターで回収できるだろうと推測。そうこうしているうちに黒のツナギのスタッフから新たなヒントを回収した仲間が戻ってきた。そのヒントを見て、仲間の一人が解法に気付いたようで、放置されていた謎の記号の解読がはじまる。

 しばらくして赤のツナギのスタッフに会いにいった仲間も戻ってきた。得たヒントは謎の記号の解読に必要なものと、方眼の一番下に書かれているものと同じような数字たち。しかし、このヒントを得るまでもなく、謎の記号は既に解読できていた。「ソラモンデウインクシロ」。空門――つまり、スカイゲートでウィンクする必要がでてきた。内心では、「あれ、ウィンクって夜の学校からの脱出でもあったぞ――?」とどうでもいいことを考えていた。それだけ、しっかり頭は働いていた。

 あとは、数字とアルファベットの列が残っている。最初の方眼を埋めたときに出てきたものと、ツナギの人達から回収したヒントに書かれていたもの。仲間の一人がずっとこの謎に取り組んでいたが、ちょうど解けそうな雰囲気だったので、スカイゲートにいくのを少し遅らせることにした。

 それからさほど待たず、数字とアルファベットの謎が解読された。解読してる仲間が遊園地の地図に線を入れはじめた辺りで、「なるほど、そういうことか」と思ったが、やはりそれがアタリだった様子。線と点から、最初に与えられた謎の記号と同じタイプのものが出てきた。こちらを先ほどと同じ手法で解読してもらうと「ニカイ」。さて、二回? 何が、二回なんだろう、と少し首をかしげる。考えられるのは一つ。

「ウィンクを二回」だ。

全力で前進。でも仲間も荷物も置いていかない。

 ここまで来て、僕らは解き残した謎はないとばかりに、スカイゲートに向けて動き出す。皆興奮しているせいか、荷物の忘れ物などがありそうで怖かったが、そういうのを念入りにチェックする癖がついているのでついつい確認してしまう。人数が多いと全体行動での機動力が下がるなあ、と思いつつ上手いこと皆はぐれないようにスカイゲート――入場口に向かった。

 スカイゲートでは、何人かのスタッフらしき人が並んでいた。リアル脱出ゲームではよく見る光景。スタッフにある動作をすることでヒントを貰う、というものだ。しかし、いつもならば行列が出きているはずのそこには、スタッフ以外誰もいなかった。スタッフが無線か何かで連絡をとっている内容から察するに、我々がスカイゲートに来た最初のグループだったようだ。後続はいない。この時点で一番前にいた。

 焦らぬよう一人ずつスタッフの前にたって、二回、ウィンクする。中には展開の速さについれこれずスタッフに何をしたら良いかいまいちわかってない仲間もいたが、そこは気のきく仲間がフォローしてくれた。全員がもらったヒントはカードだった。上部にはアルファベットの列、間に太陽のマークと月のマークがひとつずつある。下部には「馬から下へ読め」。この二つを解けば、クリアか? それとも、もう一段階ある? 時間を気にしつつ、各々が思い思いに解読を試みる。

 実は、最初に渡された封筒には「最後のヒント」なるものが書かれていた。「太陽と月の真ん中には大切なものが隠されている」。上のアルファベット列には途中に太陽と月のマークがある。自分はこれを考えることに決めた。これが一番難しそうだったから、というのもあるが、なによりも「どこかで見た覚えがあった」からだ。

 このヒントを単純に読むと太陽と月の間にはアルファベットのLがあるので、まずは地図上のLに向かうことに。しかしLの場所の売店は閉まっていた。何もない。やはり違うか、などと考えているうちに下部のヒントが仲間の二人によって解かれる。この二人、片方は地図に線と点を書きこんだし、もう一人は最初の謎の記号をヒント半分で解いている。一部性能のおかしいメンバーがいるようです。

 解読の方法は聞いてみれば簡単だった。最初に与えられた用紙の左下にある「夜の遊園地からの脱出」のロゴの最後に馬がかかれているが、この馬が実は上を向いている。正確には、頭を右に馬を描いて、それを90度回転した形になっている。つまり、その馬の下は、ロゴの右側。そこには、最初の謎の記号があった。馬の天地が正しくなるように90度回転すると――謎の記号が形を変えて表れる。解読方法は同じ。解読した結果は、「ナカニハイッテアクシュ」。

最後の謎――答えは僕の頭の中に

 皆の顔が少し明るくなる。中に入って握手。しかし、いったい、どこに入ればいいんだ? この疑問を払拭するには、未だ解けぬ最後の謎を解く必要がありそうだった。椅子とテーブルがあるカフェで皆でこの謎を考える。

 ちょうど開始60分が迫っていた。開始時に司会の方は、「開始60分の時点で何もアイテムを持っていない人は太陽の広場に集まれ」といっていた。ちょっとだけ内容が気になったので、一人でそちらを見にいく。はじまったのは、最初の8つのヒントの解き方の話。僕たちの進み方が間違っていないことを確認して、すぐに戻った。

 そして、戻ると同時に思い出す。Aから始まりXで終わる、アルファベット列の規則を。

 そう、僕はこの謎を、謎の規則を、そして解を、知っていた。直前の金曜日、 SCRAP の作った謎。

音楽ニュース - エキサイトニュース

 頭の中で自分の記憶から引き摺りだしたルールが今回の謎にマッチすることを確認。すぐに全員を集めて解読した結果を提供する。太陽の位置にはF、月の位置にはNが入る。地図上のFとNを繋いだ真ん中は、最初に集められたオープンシアターの近くだった。

 皆でオープンシアターへ行く。壇上へあがる。しかし、何もない。仲間たちの何人かは、目的地がオープンシアターであることに疑問をいだいていた。オープンシアター説は既に間違っていることが確認されたので、そちらの意見を聞く。オープンシアター横の極楽門が怪しい、という声。しかし極楽門の先はすぐオープンシアターで、そこからは門の裏側も見える。「オープンシアター横の白いテントは――?」

 白いテント。ここに来る途中にあった。スタッフが一人立っていて、ちょうど僕らがその前を通ったとき、プレイヤーの誰かが入ろうとしていた。そこか――? 他にも、オープンシアターの向かいの建物説も出る。分散するか? いや、ゴールは皆で、だ。どちらかが正解だと、もう片方に行ったメンバーはどうなる?

 思い思いに動こうとするメンバーに白いテントに向かうことを告げる。大人数での移動。テントの前のスタッフに声をかける。「テントの中に入れませんか?」返事はこうだった。「何名様ですか?」

 勝利を、確信した。

「14人です」「全員集まるのを待ってください」後続がテント前に集合するのを待つ。「どうぞ」という声とともに14人で白いテントに誘われる。その先には別のスタッフがいた。ここですることは、ひとつ。スタッフに声をかける。「握手、してもらえませんか?」

 スタッフと握手する。スタッフがとても小さい声で、「おめでとうございます」と言った。この瞬間、僕たちは脱出に成功した。

脱出の余韻

 その後、スタッフの方々に示される通りに移動して、脱出成功者のための控室に辿り着く。僕たちは一番乗りだった。控室に辿り着くまでにすれ違うスタッフの方々が皆、「おめでとうございます」と言ってくれるのが嬉しくてしかたなかった。脱出に成功したのははじめてではない。しかし、一番乗りで脱出したのは、はじめてだ。この感動は、言葉にするのはちょっと難しい。

 後から少しずつ、脱出成功者が入ってくる。その度に祝う。総勢65人。脱出率、6.5%。そうやって、タイムリミットを向かえ、最初に集められた場所、オープンシアターでの司会者による解説が終わるのを待つ。仲間は皆、この解説を聞きたがった。全ての謎の解を知っていても、なお、この解説は聞きたくなるのだ。

 余談だけれど、脱出成功者にも最後の太陽と月のマークが書かれた謎を解けてない人は結構いた。彼らは握手することはわかっていて、彷徨ったあげく、試しに入ってみたら入れた、という形で脱出したようだ。恐らく、あの謎が最後に脱出できるかできないかを振り分ける謎だったのだろう。

 解説が終わりに近づいた頃、スタッフからの招集がかかる。僕たちは、オープンシアターのステージ裏に集められる。この先の展開はわかっている。解説が終了すると共に、目の前の扉が開き、僕たちはステージの上で脱出成功者として脱出できなかった参加者の前で紹介されるのだ。

 最初に脱出したということで、一番前に立たせていただいた。他の脱出成功者たちに感謝する。僕たちは一番前で、開くのを待つ扉の前で、横一列に並び、手を繋いだ。僕はちょっと気恥ずかしくて、サングラスをかけていた。

 そうこうしているうちに、扉が開く。前回の夜の学校からの脱出でも同じパターンで成功者が紹介された。あの時は、失敗した側で、悔しい思いをしたけれど、今回は違う。脱出成功者として、堂々と自分たちの成果を誇り、壇上に立った。すごく良い気分だ。それと同時に、毎回こんなすごいイベントを作っているスタッフたちに対する尊敬の念がわく。プレイヤーとして、敗北を味わい、勝利も味わった。次は創る側に行きたいという気持ちが強くなる。この気持ちは、そのうちどこかで活かすことになるだろう。そんな気がした。